活躍中の卒業生に聞いたパレットクラブの魅力

霜田あゆ美

2期、3期イラストコース卒業

しもだ・あゆみ…横浜生まれ。07年HBファイルコンペ日下潤一賞。刺繍、貼り絵、版画など色々な手法を使ったイラストで多方面で活躍中。
http://ayumishimoda.com

●パレットクラブ スクールに通うきっかけ

子供の頃は絵が好きだったんですが、美術系の学校には進みませんでした。でもイラストを見るのは好きでした。
短大卒業後は画材店に勤めたのですが、8年くらいした頃、友だちが欲しいなあと思って安西水丸さんのイラスト塾に通いました。もうすぐ30歳になるというあせりもあって。そこでゲストで来たデザイナーさんに、「美大生などのたくさん絵を描いた人にはかなわない」と言われ、学校に行きたいなあとおもいました。見学に来て、築地の場外市場にあるのが気に入ってパレットに通うことに。父が魚屋なので親しみが湧いたんです。

●パレットクラブ スクールに通って

色々な先生がいて、コメントも先生によって違うから、戸惑ったり落ち込んだりもしたけど、新しいイラストを描く環境が楽しかったです。気になる絵の人には声をかけて友だちになって、帰りに絵について色々と言い合ったり。でも、イラストレーターになれるのかなあって感じで意識は低かったです。そんなときにHBギャラリーのファイルコンペで藤枝リュウジ特別賞を受賞してしまい、実力もないのに賞をもらってどうしようと思って、鍛えなくては!ともう1年通うことにしました。2年目は楽しいだけでなかったけど、自分の絵を冷静に見られました。同級生が違うから、飽きることはなかったですね。すでに仕事をしていて、ステップアップしたくて来ている人もいたから、刺激にもなりました。

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●授業

河村要助さんの風景という課題の授業。「コタツの上で描いているようだね」と言われて自分でもアッと思い、へこみました。イラストレーターになりたいという強い思いがなくて、それを見透かされた気がしました。自分は甘いなあと。それからは、色んなイラストレーターの仕事をたくさん見て、意識が変わりま
した。 森本美由紀さんが、誰かの質問に「安定した収入を求めるならやめといたらー。
イラストレーターは波があるからそういうのも楽しめないとしんどいと思うよ」とさらっと言われました。そういうことは考えてなかったから、覚悟しとかなくちゃいけないなって思いましたね。絵のスタイルが違うヒロ杉山さんに「面白いよ」と言われたときには驚きました。先生方は自分と違う感じの絵でも、ちゃんと見えているんだなあと思いました。

●仕事を始めて役立ったこと

打たれ強くなりました。自分の絵をたくさんの先生方に見てもらって、色々言われたことが身に付いてるんですね。ときには、何回もラフを出したり、ダメ出しされたりと悪戦苦闘する仕事があります。そういうときに、乗り越えていく筋肉みたいなものが鍛えられていたんだと思います。
自分の絵を講評されるなんて、心臓がバクバクしていたけど、世の中に出ていったら、たくさんの人が見るのだからそんなことでは仕事にならない。パレットの授業でちゃんと筋トレができていたんですね。 パレットに通っている頃から、常に新しい自分の描き方を探していて、ファイルに毎回同じ絵は入れないで、1枚、2枚でも新しい絵を入れて、講評してもらいました。常に探している。それが今も続いていて、貼り絵、切り絵、刺繍、版画など色々挑戦しています。紙版画とかやってみたいなと思ったら、すぐにやってみる。そういうのが癖になっているんです。なんでも試してみればいい。仕事をすると「このタッチで」と言われるけれど、学校にいる間は自分のスタイルはどんどん変えていっていいと思います。そうやって、自分を探す時期なんじゃないかと思います。

●仕事

チキンラーメンの雑誌広告を3月まで1年間担当しています。他にはオレンジページ、ベネッセなど子供向けのカットも多いです。ほんとは毒があるのに、赤ちゃんやほんわかファミリーの依頼があるんです(笑)。
個展に見に来てくださったのが縁で、夏石鈴子さんの装丁やエッセイの挿し絵も手がけました。いろんなところで、縁はすごく感じますね。有り難いです。色々なタッチがありますが、増やしていこうというつもりはなくて、いろいろと探しているうちに、こうなりました。ほんとは鉛筆1本でいい絵が描けたらいいんですけどね。違う手法をやることで、また線画に戻ったときに影響があればいいなと思っています。
イラストレーターはたくさんいるから、その中で自分がどういう絵を描いていったらいいのか、常に考えています。

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●最初の仕事

最初は臆病で友だちに『ダヴィンチ』編集部へ営業に連れて行ってもらいました。そこで扉絵の仕事を頂いたのが最初です。その後はちゃんと1人で持ち込みに行かれるようになりました(笑)1年目は営業成績がよかったのですが、だんだん依頼がなくなってきて、落ち込んでいたときに、HBギャラリーで個展をしました。それがきっかけになって、絵が変わったとおもうし、見に来てくださった方から仕事の依頼があって、なんとか浮き上がった感じですね。あの個展をやらなかったらダメでした。
パレットに2年通った後は、スタッフとして1年働きました。その後、アルバイトをしながらイラストの仕事を続けてきましたが2年前に辞めて、今はイラストの仕事だけで生活しています。

●影響を受けた人

中野翠さん。19才のときにコラムを読んで以来ずっと影響を受けています。映画や本や落語や…。辛口なところも好きです。あと、グランマ・モーゼス、斉藤けさ江さん。2人とも70才から絵を描き始めた人です。とてもいい絵をたくさん描いていて、すごく励まされます。こういうおばあちゃんたちもいるからあせらない。ちょっとくらい仕事がこなくてもあせらない!って。

●生徒さんへのアドバイス

アドバイスを聞いて自分の絵を変えていくというのは、大事なことだと思います。自分というものを持っているべきなんだけど、固執しないで試していったほうがいい。他の人へのアドバイスも必ず自分にあてはまることだから、ちゃんと無駄なく聞いたほうがいいですね。
イラストレーターの仕事は、本屋さんに行けばたくさん見られるし、どんなイラストが求められているか、すごく勉強になるとおもいます。出版だけがイラストの仕事ではないけれど。本も読んだほうがいいですね。イラスト以外にも色々なことに興味を持ったほうがいいと思います。意外なものにヒントがあると思うから。