活躍中の卒業生に聞いたパレットクラブの魅力

得地直美

8期イラスト基礎コース卒業

とくちなおみ…富山県生まれ、京都府育ち。京都精華大学卒業。主に色鉛筆を使ったイラストで、雑誌、書籍などで活躍中。著書に13年『本屋図鑑』(夏葉社)など。
http://www.hitokuchi.com/

●パレットクラブ スクールに通うきっかけ

大学では、美術とは関係のない勉強をしていたんですが、美術学部があったので図書館が充実していて、そこで和田誠さんの画集を見たりしていました。たまたま授業でイラストを描く機会があって、それが楽しくて「描くことが好きなのかも」って。こっちのほうが面白そうだなと思って、方向転換。それで、イラストの学校を探して見学に来たら、すごく好きだった和田誠さんの授業で、ここに来なきゃと思いました。

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●授業

よく覚えているのは、大西重成さんに「あなたは時間がかかると思うけど、人によってペースがある」と言われたこと。あせっていたのが楽になりました。自分のペースでやればいいんだなって。加藤裕將さんの授業では、大きい紙に冷蔵庫を描いて褒めてもらい、気に入ってくれる人がいたことで自信になりました。でも、模写の課題でスタインバーグを模写したら「模写はこんなにできるのに、なんでクロッキーはこんななんだろうね」と不思議がられました。下手だとびっくりされたんです。今まで描く環境じゃなかったけれど、課題があることで常に描くようになり、何も分からないままパレットに入ったけれど、先生や友達からいろんな刺激を受けられてよかったなあと思っています。

●影響を受けた人

小林泰彦、和田誠、ソウル・スタインバーグ、ベン・シャーン。木村衣有子さん。衣有子さんの著書『もうひとつ別の東京』では、装画を描かせてもらいました。

●仕事

雑誌『天然生活』のタイアップ記事に絵を描かせてもらったのが最初の仕事です。この仕事は、同居人の知り合いだった木村衣有子さんに紹介してもらったんですが、そのときにファイルを持っていったのが始まりですね。
それからセキユリヲさんにファイルを見てもらったら、しばらくして『サルビア給食だより』のお仕事をいただきました。最近は『季刊サルビア』で描かせてもらったりしています。
アノニマスタジオさんの『fu-chi』では、広告ページや特集ページの地図、アノニマだよりのイラストなどを描かせてもらいました。
これからは、小林泰彦さんのような、イラストルポをやってみたいです。誰かとどこかへ行って、そのことを伝えるイラストを描いてみたい。小説の挿し絵もやってみたいです。すごい長い目で見て、新聞の挿し絵もすごい憧れです。あと、清水ミチコさんの連載などですね。好きな人とイラストを通じて関わりたい。

●個展

デザイナーの横須賀拓さんに「すぐには一緒に仕事をできないけれど、まず個展をやってみれば?」と勧められたんです。
それで2005年に、初めての個展を開きました。それから毎年同じ時期に同じ場所でやらせてもらっています。
第一回は「封筒展」。第二回は「メモ帳に描く」。第三回の昨年は「あこがれの比較的長期の旅行」で、仕事で使った原画と書き下ろしを展示しました。
個展をやってみて、自分にはどんなやり方が合っているのかが分かりました。
私は自分から描くタイプじゃないみたい。何かテーマがあったほうがいいんです。
次は誰かお題を与えてくれる人と一緒にやってみたいと考えています。

●生徒さんへのアドバイス

とにかく課題をやるということ。私も課題をやって見せなかったことがあるけど、原子高志さんに「やらなきゃダメだよ。恥かかなくちゃ」と言われました。今はその通りだなあと思います。課題をやり続けるだけで、生活の中で描く時間が増えます。パレットでの経験を活かすためにも、課題をやること、それと講師の先生の話をよく聞くことがとても大事だと思います。

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左『季刊サルビア』美篶堂のイラスト
表紙イラスト『もうひとつ別の東京』著/木村衣有子(祥伝社)