活躍中の卒業生に聞いたパレットクラブの魅力

原裕菜

15期イラストコース卒業

はら・ひろな…東海大学教養学部芸術学科卒業。イラストレーション誌『ザ・チョイス』第189回・190回入選。ギャラリーハウスMAYA装画を描くコンペティションVol.15芥陽子賞、『HBファイルコンペvol27』副田高行賞他。書籍、雑誌、広告などで活動の幅を広げている。
http://hiroringo.com

●パレットクラブ スクールを選んだきっかけ

大学時代にイラストレーション誌を読んでイラストレーターに憧れ、イラストレーションを描き始めました。でもそれまでは誰かの作風に似た絵ばかり描いていたので、ある時自分のタッチに行き詰まり、一度はイラストレーターになる道を諦めて普通の会社に就職しました。それからは趣味として絵を描いていたのですが、5年ほどの会社員時代のあいだに本を読んだり映画を観たり、様々な経験を通して自分の世界を広げていくうちに段々描くことが楽しくなってきて、自然と描いた絵を人に見てもらいたいと思うようになりました。パレットクラブは雑誌の広告で見つけたのですが、数ある学校の中でも憧れのデザイナーさんやイラストレーターさんが毎週入れ替わりで講師をされるので、色々 な意見を聞くには1番良い環境だと思えました。

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『七尾のために』
著/島本理生、装画/原裕菜(講談社)

●パレットクラブ スクールに通って

毎回色々な方のお話が聞けてとても刺激になりましたし、楽しかったです。イラストレーター、デザイナーと同じ業種の方でも皆それぞれ考え方やものの見方が違っていて、同じ作品を出しても返ってくる反応が全然違うこともありました。そうした様々な人の目に晒されて、自分のイラストレーションとは何かを考える作業は、迷いながらも楽しいものでした。この時に自分の個性を受け入れてくれる場所もあるのだと思えたことが、卒業してからも個展や売込み等の活動にどんどん飛び込んでいくための自信に繋がったと思います。

●授業

課題は先生によって様々なのですが、名久井直子先生の「イノセント」、長崎訓子先生の「赤、流れる、時間」等、抽象的なワードを元に描いてくる課題が楽しく、印象に残っています。例えば書籍の装画であれば本の内容をそのままイラストレーションにするのではなく、内容と少し距離感をもって描くこともイラストレーションの一つの方法だと学んだ授業でした。また、安西水丸先生が授業で仰っていた「絵の上手い人ではなく、絵を好きな人がイラストレーターとして残ってゆく。」という言葉は、今でも思い出しては励まされます。

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●仕事

上記の続きになるのですが、媒体と自分のイラストレーションとの距離感や、仕事を受けた際にどうやってイメージを膨らませていくか等は、パレットの課題をこなしていた時に学んだことが大きいです。そういった意味では、パレットの課題で実際の仕事にとても近いシュミレーションが出来たことが役に立っていると思います。

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広告『北欧トラベル』
「地球の歩き方」より

●最初の仕事

パレットを卒業して1年位した頃、講師の名久井直子さんからお仕事を頂いて、カレン・ラッセル著、松田青子さん翻訳の『狼少女たちの聖ルーシー寮』という短編小説集の装画を描かせていただいたのが最初のお仕事です。
授業の際に、名久井さんが作品を気に入ってくださって、ファイルをお送りさせて頂きました。それから大体1年後くらいにご依頼を頂きました。

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『狼少女たちの聖ルーシー寮』
著/カレン・ラッセル、装画/原裕菜(河出書房新社)

●最近の仕事

ちょうど初めてのお仕事を頂いた頃、チョイス等のコンペにも入選するようになってきたので、それを機にデザイン会社や出版社へ売込みをするようになりました。初めは書籍や文芸誌がメインでしたが、展示や売込みで出会いが広がっていくうちに広告、web、ステーショナリー等自分では思ってもいなかった分野のお仕事を徐々に頂けるようになってきました。

●これからやってみたい仕事

物語性のある絵を描くのが好きなので、絵本の仕事がしてみたいです。また、大きな媒体(電車や街中の広告等)のお仕事にも挑戦してみたいです。

●影響を受けた人

沢山ありすぎて脈絡がないようですが、ツヴェルガーの絵本やバルトゥス、ドガ、マルセル・ザマ等のアーティスト。マイケル・ケンナやクーデルカ等の写真家。宇野亜喜良さんや長崎訓子さん。北村人さんからはイラストレーションの考え方だけでなく仕事に対する姿勢など様々な面で影響を受けました。

●生徒さんへのアドバイス

他の方も仰っていることですが、課題は毎回出した方が良いです。自分では駄目だと思って出した課題でも、講評の中ですごいヒントを貰えたりします。厳しい評価に一喜一憂せず、ぜひどんどん描いて沢山出して下さい。もし心折れそうになったり迷ったりしたら、どんな小さなことでもスタッフの人たちに相談してみてください。沢山のイラストレーターが育つのを見てきた方々ですから、きっと何かヒントをくださるかもしれません。